束芋展 感想メモ その1

私には美術作品を批評する、ということは出来ないので、感じたことをメモ的につづっていきたいとおもいます。
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束芋さんの作品には「他者の生活を覗き見したい」という、皆が日頃こころの奥に押し隠しているヨクボーを満たす所がある。そして彼女のインスタレーションを観る者は覗き見の背徳的なワクワクを感じつつその世界に引き込まれていくのだけれど、気がつくと自分自身の過去や記憶、今の自分が抱える不安感と顔をつきあわせているのに気づいて衝撃を受ける。
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束芋さんはインスタレーション作品のために、登場するパーツ(たとえば団地の中であれば家具・照明器具・便器・乱れた蒲団・シーツなどのありとあらゆる家財道具類)を全て個別の原画として手描きするそうだ。1秒間の動画に対して数枚ずつ各パーツの動きを構成する原画が必要となる。それは一作品につき合計数百枚、あるいは数千枚に及ぶこともあるそうだ。そして一枚一枚の原画はPCに取り込まれ、一つの画面上で動きを持つように編集されていく…
なんという気の遠くなるような作業!!まるで「独りジブリ」。
この制作過程については、『束芋展図録』収録の横浜美術館学芸員Kさんの文章中にて言及されている。私はこれを読んだとき、具体的にその作業をイメージすることができて(私も絵を描くので)、具合が悪くなってしまった。
束芋さんは一体、一日何時間絵を描いているのだろう…
今回の展示に『団断』というのがあった(=“団地”の“断面”)…  あの一本を完成させるために確実に数百枚の原画が必要なのではないかとおもう。…いや、出てくる家財道具、畳、ドア、人物の数を考えたら1000枚以上か。(彼女の作品では風景は一秒たりとも静止することがなく、絶えず移動し変容し続けるからだ)
その作品中、数秒だけれど、人間が洗濯機の中にカラダ半分入ってくるくる回っているところがある。あれだけで何枚描いているのかな、と思ってちょっと眩暈がした。
 

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コメント

コメント一覧 (2件)

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    ああ、読んでるだけで気が遠くなりそう・・・
    才能がある人が努力をするから、すごい作品が出来るんでしょうね。

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    ほんと、その通りですねー。
    …ある意味、先が見えないほどに時間のかかる、地味な作業をこつこつこつこつやるというのはなかなか出来ないですよね。
    そこに情熱を懸けられる彼女の勇気、というものに心を打たれます。
    それこそ「もらう」勇気じゃないですよねー。

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