『驚異の部屋へようこそ』-町田市立国際版画美術館-

ひさしぶりに町田市の国際版画美術館にいってまいりました。
文化の日、ということでしょうか、行ってみたら「本日無料」となっていてありがたかったです。
「版画でつくる :『驚異の部屋へようこそ』」
15-18世紀ヨーロッパの王侯貴族の間で流行したという『驚異の部屋』を描写した版画からはじまり、
その部屋の雰囲気を再現することをテーマとしてあつめられた版画約200点が展示されておりました。
美術館サイトの記述にもありますが、『驚異の部屋』はまさに博物館、美術館の走りだったようですね。
その様子をあらわした版画をみると、もう壁から天井にいたるまでびっしり標本だの剥製だの
珍しい石だのが展示されているのです。
天井からワニの剥製が吊るされていたのは…  ちょっと危なそうな感じでした。
あれどうやったのかしら。
後年、ルーブル美術館となるギャラリーの様子をえがいた版画もありまして
(すみませんカタログがないので正式名称不明) これは興味深かった。
なんと
壁面全部!にびっしり絵画がならんでいるんですよ。
びっくりしました。
たいへんに作品を鑑賞しにくい状態!(*ε*)
天井近くの作品なんてロクに見えなかったでしょうし、
どれかの作品をじっくり見ようとしても上下左右すぐ近くに別の作品が並んでいるので
視界が混乱しそうな感じ。
かつてはあのような状態だったんですねぇ、
つまり「美術館」というものが最初っから現在のような有り様ではなかったということです。
そう考えると、あの版画って歴史的に重要な物証といえますね。
『怪物』『生物』に関する版画もあるらしいと事前に知ったので、興味を惹くかな、と
こども二人を連れていったのですが、
じっくり見るワタシをよそに二人でぱーっと展示を見て回っていまして、
しばらくして戻って来たら…
息子が涙目になっていました (^_^;) 「気分がわるい…  怖い…」 って。
そうです。
近世ヨーロッパの版画ですからね…
あれですよ。医学が大きく進歩した時代……   つまり…  解剖図が版画で残っているわけで。
ワタシの予想以上に多かったんです。しかも特大サイズで色彩もやたらにこってりと鮮やかな解剖図が……  
(あくまでも医学書の挿絵として重要な意味があったので色彩に凝ったのは当然だったでしょう…。
現在なら写真を入れるところです)
もう年齢的に大丈夫かなとおもっていたのですがやっぱりイヤなものなんですね。
またしてもやってしまった自分……   
(以前、森美術館で開催されたキョーレツな『医学と藝術展』に連れて行ってしまったこと有)
そのコーナーをなんとかやり過ごしたらしいコドモタチでしたが、
最後のコーナーで
ズラリと並んだ『骸骨』の版画にノックアウトされたようでした ^^;
いわゆる、『メメント・モリ』( 『死を思え』、『自分たちのすぐ傍らに死はあることを忘れるな』)、
というテーマで制作された版画が数多く残っていまして、
15-18世紀当時ずいぶん売れて版を重ねたらしいのです。
その版画のなかでは、死、あるいは死神が骸骨として日常生活のなかにさりげなく描きこまれて
います。
ワタシくらいの大人から見ると、その表現というのはちょっと諧謔的で、なんとなく笑ってしまうようなものもありましたし、
俗物的ですらある骸骨が、愚かな人間の姿を鋭く突いているようにも見えたり、
実際、人間の命のはかなさも現実的に理解していますから、しみじみと見入ったりもするわけですが
こどもたちから見るととても恐ろしかったようなのです。(版画の意図を感じとった、ということなのかもしれませんが…)
「あぁ、ごめんごめん怖かったね、外へ出ていていいよ」 と言うと
安心したように展示室を足早に出て行ったので
美術館の外に出たかなぁとおもっていたら、
常設展『チベット密教美術展』の部屋で待っていました。
あの過剰な近世ヨーロッパのあとでは、仏さんたちのモノクロの絵がとても優しく見えて和みましたよ(笑)
あぁ やっぱり自分はアジア人だと再確認…
ただ、なかに“千手千眼観音”?とかいうのがありまして、ふっくらした観音さまから
ごっそりと腕が放射線状に出ていて、それぞれの上腕部に目がついていたものですから (<若干ホラー)
「うわー すごいねコレ、初めてみたー」 とうっかり指摘してしまったワタシの言葉をきいて
素直にその版画をじっくりみてしまった娘が
「あぁ…  なんだか目が回ってきた…」 (<娘は車酔いしやすい)
というので慌ててそこから去りました☆
---------------—-
今回の展示『驚異の部屋へようこそ』は
“癒される”“うつくしいもので目の保養”…というよりは、“脳を刺激してパーンチ”系でしたね ^^;
歴史的記録、博物学的な意味をもつものが多かったので…
わたしとしてはとても面白かったです。
「そういえば世界史で勉強したなぁー」と遠い記憶がよみがえってきたりもして…
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ワタシが見終わって 「じゃあ お昼たべる?」と言うと、こどもたち二人とも
パーッとあかるい笑顔になりました(笑)
この版画美術館は芹が谷公園という広ーい公園の一角にあります。
秋の風に吹かれつつ、小鳥のさえずりを聞き、 (しかしいつもヒヨドリは騒がしい…)
流れる水をながめながら3人でお昼をたべて帰ってきました。

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コメント

コメント一覧 (3件)

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    楽しそうな展示ですね~
    子供の頃の僕なら喜んで観に行きそうですけどね・・
    「だって絵だもん」とか言いそう
    中途半端にリアルな人形はダメですけどね
    優秀な学芸員がいらっしゃるんでしょうね

  • SECRET: 0
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    銅版画の精緻さときたら凄かったです。
    なんかちょっと狂気じみた熱意を感じてしまいました…
    ---------------—-
    うちの息子ですが、  先日、右手におおきなカマキリ、左手にバッタを捕まえてきて
    そのカマキリの鼻先にバッタを差し出したところ
    カマキリがそのバッタに喰らいつき食べ尽くすのを (<カマキリもバッタも息子に持たれたまま)
    じーっと凝視していたので  
    解剖図なんてへっちゃらになっただろなとおもったのですが
    それとこれとは違うらしいです…
    ちなみにカマキリは、バッタの黒い内臓だけをキレイに残していました。
    美味しくなかった模様。 
    ついついワタシもすべてを見届けてしまいました…  ((;´∀`))
    満腹になったカマさんはそのあと野に帰っていきましたとさ。
    おしまい。

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