ふつかおち

演劇の世界で 「二日落ち」という言葉があることを初めて知った。
初日、極限の緊張状態のなかでうまく舞台をこなしてお客から良い反応を得ると、
二日めに気の緩みか何なのか、
出来が悪くなることがしばしば起こるのだという。
どうしても 「良く出来た前日の演技をなぞってしまうから」と
ある役者さんが言っていた。
なぞる、つまり同じことを再度おこなおうとする、
でもそういう動きはどうしても新鮮さを失い
どんどんつまらなくなるようなのだ
ある意味、前日の「記憶」が、皮肉なことに演技の邪魔をするということなのかも。
しかし、その役者さんが言っていたのは
ジャズピアニストの上原ひろみさんの演技は
驚くほどに毎回新鮮だ。
二日落ちがない。
ということだった。
彼女は毎回の演奏のたびに完全にまっさらな生まれたての音を響かせて
聴衆を圧倒し魅了する…
ということはどういうことなんだろう、
毎回どんなにうまくいった演奏でもその記憶を切り捨てるということなんだろうか。
その記憶が残っていたとしても、
それはそれ、二度と同じ音を出すことには興味がない、ということか
… わたしはその話を聞いていて、
絵でも同じことがいえるかもしれないなぁとおもった。
漫画を描く人ならわかるとおもうけど、
ストーリーができて紙の上に絵として描きだすとき、
最初の絵がなぜか良いのだ。
それがどんなに走り書きのようなものだとしても、
その躍動感のようなものはなかなか書き直しの絵に同じように宿るわけにはいかない。
いままで、なんでそうなんだろうと漠然とギモンを感じていたけれど、
「二日落ち」に関する会話をきいていて
ちょっと目の前が晴れた気がした。
大事なことは
毎回、新しい生まれたての気持ちで紙に向かうことなのだ。
どんなに前の絵がよかったとしても、
再び同じように描こうとするのではなく、
あらたにより良い絵を生みだそうとして線を引きはじめることが
大切なのかもしれない

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コメント

コメント一覧 (2件)

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    初回の緊張感が持続させることは難しいってことですかね
    下書きは上手くいっても本番は良くないとか
    人が見てることに気が付いたら失敗するとか
    そういうこともあるかもしれませんね
    僕が人前に出るのが嫌いな理由「もそこら辺にあるのかもしれません
    世阿弥のあの言葉もそこを言ってるのでしょうね

  • SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    世阿弥のことば… 
    「秘すれば花 だっけ?いや違う^^;」と、つい検索してしまいました。
    たかさまがさしているのは「初心忘るべからず」でしょうか。
    ほかにもいろいろ名言がありそうです。
    「いつも新しいきもちで」線をひく、人と話す、考える、、
    、、、、
    心がけたいものです。
    あー 我が子に対してもそう接するべきですよね…
    つい惰性をもって見てしまっていて
    もしかしたら既に何か良い芽を摘んでしまっているかも (´`;)

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