『リトル・フォレスト』(五十嵐大介)

五十嵐大介さんはいま非常にスケールの大きいファンタジー『海獣の子供』でファン拡大中だけれど、一方で非常に現実的なエッセイ(あるいは私小説)風の漫画を描いていてそちらの作品たちも大変に捨てがたい。むしろ私はそっちのほうが好きだ。たとえば『リトル・フォレスト』『カボチャの冒険』。
とりわけ『リトル・フォレスト』はたまらなく好きだ。…好き、というレベルを超えているな。もう一生手放したくない愛おしい作品。
五十嵐氏が数年移り住んだ東北の地をモデルにし、そこで生まれ育ったヒロインの揺れる心情(今後生きる土地を選びかねている)をこまやかに描いている。
実際の氏の経験にもとづいた農村での生活をベースに描いているので、もう全く誰にも真似のできない内容だ。(想像で描ける内容ではない、ということ)
それに、なにしろストーリーの脇をがっちり固めているのが食生活の描写!!!どれもこれも美味しそう。
氏が実際に手作りしたお料理のレシピとか、作ってみた感想や写真などが載っていて文章がなんとも穏やかで優しげで、しかも物語の中のヒロインの心の動きが手に取るように伝わってくるし、ヒロインと失踪した母親との確執の中ででてくるセリフがリアルなので、わたしは
「このひと、ペンネームは男性名だけど女の人だなーきっと!」
と勝手に思い込んでいたが正真正銘の男性であったので仰天した。
なんであんなに女の心情をこまやかに描けるのだろう… スゴイ。

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